平昌五輪にて、アメリカ代表のアダム・リッポンとガス・ケンワージーがひときわ称賛されるワケ! ふたつの“キス”が持つ大きな意味とは?

現在、韓国にて開催中の平昌オリンピックにて、ふたりのアメリカ代表選手が一際大きく注目されている。アダム・リッポン(28)と、ガス・ケンワージー(26)についてご紹介。

アダム・リッポンは、フィギュアスケートの男子シングル代表として平昌へ。初めてのオリンピックながら、団体戦ではフリープログラムに出場し、アメリカの銅メダル獲得に貢献。個人戦では10位となった。

ガス・ケンワージーは、フリースタイルスキーヤーとして、スロープスタイルに参加。前大会ソチ五輪では銀メダルを獲得した彼だが、二度目の五輪を12位で終えた。

ふたりが注目されるのは、競技においてのみではない。アダム・リッポンと、ガス・ケンワージーは、それぞれゲイであることをかねてより公にしている。スポーツの分野において、選手が自身の性的指向を明らかにするケースは少なく、アダムやガスは「初めてゲイであることをオープンにした冬季五輪アメリカ代表」として紹介されることも。

現地時間2月9日に行われた開会式にて、ともにアメリカ代表として行進を行ったアダム・リッポンとガス・ケンワージーは、世界中が注目するイベントのさ中、カメラの前でキスをした。このときの写真を、ガスは「ぼくらはここにいる。ぼくらはクィア。このことに慣れてね」とツイッターに公開。この写真はTIMEなどメディアでも大きく取り上げられ、現在までに20万件近くの「いいね」を獲得している。

対するアダム・リッポンも、開会式に参列したマイク・ペンス副大統領との面会を、堂々と断ったことで、オリンピック期間中に見出しを飾っている。「マイク・ペンスって、あのマイク・ペンス? ゲイ治療セラピーを支援しているあの?」と、“アンチ・ゲイ”と目される副大統領をはねつけたのだ(USA Today)。副大統領側は、すぐさま「そのような事実はない」と否定したものの、媚びないリッポンの姿勢は多くの人々から称賛された。

アダム・リッポンは、過去にLGBTへの差別的な発言を行ってきた経緯から、ドナルド・トランプ大統領に対しても批判的な態度を取っており、抗議の意味を込めて、慣例通りに行われるであろうホワイトハウスからの招待を断るつもりであることを明らかにしている。(BBC、DailyMail)

「ホワイトハウスへいくつもりはないよ。ぼくのような人が、歓迎される場所だと思えないからね」
「でも自分たちのコミュニティを助けられるように、何か行動は起こすつもり」

そして2月18日、ガス・ケンワージーが出場したスロープスタイルの生中継中、「歴史的な出来事」が起きた。恋人マシュー・ウィカスと彼のキス場面が、世界中に放送されたのだ。

ガスはSNSを通じ、「昨日のキスが撮られているなんて、気が付かなかった」とコメント。「だけとすごくハッピーなんだ。子どものころ、オリンピックの中継で、ゲイのキスが見られるなんて夢にも思わなかった。でも初めて子どもたちが自宅のテレビで(ゲイのキスを)見られたんだ! 愛は愛で、愛なんだよ」

メダル獲得はなしえなかったものの、ガス・ケンワージーは今回のオリンピックを「自分が望んでいたもの」「前回、メダルを獲得したときよりも、ずっと満たされた気持ちで帰国できる」とCNNのインタビューで振り返っている。彼が自身の性的指向についてカムアウトしたのは、ソチ五輪後の2015年。だからこそ平昌オリンピックは、「自分自身として経験できた」という。大きく取り上げられた“キス”を、「クールだよ。まるで普通の、軽く見える瞬間が、本当に大きなインパクトを残したんだから」と語った。

なお、平昌オリンピックには、15人のアスリートが、自身がLGBTQであることを公言した上で参加していた。これは冬季五輪において、ソチの7人から大きく伸びた新記録であるとのこと(SB Nation Outsportsの調べによる)。とはいえ夏季五輪(リオデジャネイロオリンピック:56人)に比べると、まだまだ発展途上であることは否めない。ガス・ケンワージーは、LGBTQアスリートの未来について以下のように話している。

「ぼく自身が子どものとき、国中へ生中継される中で恋人にキスをする人はいたかな? それが受け入れられて、称賛されるなんてことは? ぼくがこれまでの人生を歩む中で、変化してきたんだと感じるよ」