「髪まで切らせておいてクビってどういうこと?」 モデルを軽んじる「バレンシアガ」に対し、“モデルの権利”を問う

@louiseparker / Instagram

ショーのために髪まで切らせておいて、あとから出番をカットにするなんて非道すぎ? あるモデルが、“モデルの権利”を訴えている。

有名ブランド「バレンシアガ」を名指しし、「おかしい」という声を上げたのは、ルイーズ・パーカーという女性モデル。彼女はインスタグラムに中指を立てた写真を公開し、「クソくらえバレンシアガ」とファッションショー前の出来事を明かした。

「クライアントのために12時間のフライトも、何時間も待たされたあとのフィッティングも、ショーのためのヘアカットだってまったく気にしないわ。(でも)そのあとになって、(出番を)キャンセルされることは別」

ルイーズによれば、バレンシアガとの正式な契約はなかったものの、髪を切ることを承知。彼女はこの件について、ショー出演の確約がない限り、ブランド側はモデルに「ヘアカット」を求めるべきではないと訴えている。この件を彼女は同じ投稿で「ヘアカットさせてくれてありがとう、バレンシアガ」と、親会社の「ケリング」を含めて皮肉っている。

「さぁ、いまこそついに“モデルの権利”を尊重するときがきたのよ(その上、私は健康的なBMIであるという医師からの証明書を得ていたわ)」

ルイーズは、一連の出来事について、「The Cut」にコラムを寄せている。問題は単なる“ヘアカット”以上のもので、根深いと訴えた。フライト、フィッティング、そしてヘアカット、そのどれもが彼女にショー出演を確約するものではないというのだ。「無力感や、簡単に切り捨てられる立場に、もううんざりしたわ」

最初にエージェントから、バレンシアガのショーに起用される可能性を耳にしたとき、「とても興奮した」という彼女。ショーまで2週間というタイミングで連絡があり、「木曜日にすぐ私と会ってフィッティングがしたいというから、12時間かけてバレンシアガのためにロサンゼルスからパリまで移動したわ」という。

「金曜日にフィッティングが行われ、いくつか衣装を試したの。うれしいことに、スタイリストとデザイナーは、私に似合うものを一着見つけてくれた。身体に合わせてから、ショーによりマッチさせるため、髪を切ってくれないかとブランド側から求められたの」

「私は自分の仕事を真剣にとらえているし、この仕事がほしかった。いつもクライアントのため、ベストを尽くしているわ。だから承知したの。ブランド側が私のエージェントに了承を取った。私も承知の上だと彼らも理解していたわ」

「だから(ヘアカットは)私の選択であり、私のミス。でもこの流れなら、ショーへの出演は確約されたと思えたのよ」

その後、彼女は髪をカット。ブランド側から好意的な反応を得ていたものの、その日の夜のうちにさらに短くするよう求められた。彼女は再びこれを了承したものの、次の日になって、すでにショーのリハーサルが行われていることを友人を通じて知らされた。

「エージェントに連絡を取った。彼女も一生懸命、私をショーに出すよう働きかけてくれたんだけれど、ダメだった。エージェントは激怒していて、私はすっかり落ち込んでしまったわ」

 

ルイーズ・パーカーは、この体験はあまり一般的でないとして、「共感を得たい」とは考えていないという。ただ、彼女のように軽んじられているモデルたちのため、“声”を上げたかったという。

「こんな扱いを受けることに、もううんざりしているの。ファッション業界関係者でないのなら、あまりピンとこない出来事でしょう。でも想像してみて。あなたの仕事や、身体、写真が流通していながら、いつも自分は簡単に捨てられるものだと感じているの。暗闇に取り残され、強大なクライアントに捻じ曲げられてしまうのよ」

「フィッティングの間中、バレンシアガは私をとても礼儀正しく扱ってくれた。食べ物も用意されていたし、24時間365日対応してくれるセラピストまで常駐させていたの。でもいまは、それが偽善的な行為であったと思えてならない。“ちゃんとしている、プロとして尊重されている”と私に信じさせるためにね」

ルイーズはスタイリストやデザイナー、キャスティングディレクターに対して、「自分が力ある立場にあることを自覚して」。バレンシアガ、ケリングに対し、「モデルやその懸念に対してもっと全体的に接して、パワーバランスを自覚して、ポリシーをアップデートして」と求めている。

また、彼女のエージェントは、ブランド側に出演料を請求しているというが、彼女自身は「お金の問題ではない」と、アメリカで働くモデルたちのためのNPO「Model Alliance」への寄付を求めている。

なお、The Cutには、ルイーズ・パーカーのコラムとともに、バレンシアガから彼女へ宛てた謝罪文も掲載されている。ブランド側は「双方に誤解があった」としており、「フィッティングやミーティングは、出演を確約するものではない」と主張。出演料の支払いを認めている。